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在学生

学んだ方法や考え方を活かすのは自分次第。今後も大学での学びが自分の力になるように、経験を積んでいこうと思います。

文学部 史学地理学科 3年 佐藤 美桜里 (神奈川県横浜市立金沢高等学校 出身)

文学部史学地理学科に進学しようと思った理由を教えてください。

当時通っていた塾の先生から勧められたことがきっかけでした。そして、国士舘大学のウェブサイトと考古日本史学コースのサイトを見て進学を決めました。もともと歴史は好きだったのですが、高校の日本史はそこまで好きではありませんでした。しかし、暗記だけの日本史ではなく、演習系の授業で「くずし字」を読むことができる点や、それまで自分がイメージしていた日本史の枠を超えた、民俗やジェンダー、これまで触れてこなかった世界史などの授業がある点に魅力を感じました。また、高校時代に苦手意識を持ってしまった日本史を、もう一度好きになりたいという思いもありました。コースの資料やHPの紹介文を読み、「ここなら歴史を好きになれるのではないか」と感じたことも進学理由の一つです。

いま一番興味?関心を持って学んでいるテーマや分野、科目は何ですか。

人の思考や思想がどのように残ってきたのか、史資料にどう残されているのかに興味を持っています。具体的には、卒業論文のテーマである「地獄」について、どういった理由で地獄は生まれ、なぜ現代までその概念が残されてきたのかを追求したいと考えています。

科目としてこのテーマについて考えるきっかけになったのは、「日本史演習Ⅰ」(ゼミ)で自分の興味があるテーマの先行研究を調べた授業や、「人間と社会Ⅲ(宗教学)」でのキリスト教や仏教の地獄についての授業です。ゼミでは自分の考えを言語化して人に説明することでより自分の考えが明確になり、宗教学では異なる価値観について深く考えることで、多様な考え方を模索できるようになったと感じています。

また、厳しさとしては、歴史学全般に言えることですが、必ず根拠となる史料を探さなければならないことです。自分の意見についての裏付けをほかの史料、論文から引用する必要があリ、初めのころは慣れず大変だった記憶があります。しかし、それを乗り越えると史料の面白さに気づくことができて楽しくなりました。さらに、日本史が日本だけで完結しない、という点も難しいく厳しいところなのではないかと思います。外国との交流や、文化の境界線が曖昧で、そもそも古代ではクニの概念が完成しておらず現在とは違うところが多いので、自分の価値観と当時の認識との齟齬が出てしまわぬよう、常に意識し続けなければならないと感じています。

学年を重ねることで自分の成長に役立ったことはありますか。

2年半を考古日本史学コースで過ごす中で、自分の歴史の見方、実践を通して史料の読み方、そして歴史の捉え方?向き合い方が変わっていったと実感しています。

1年次では、今まで見てきた教科書の歴史のうち、大きい流れや外国とのつながり、「歴史を見る視点」についての授業がありました。それまでは教科書に書かれたものが事実であって、それ以上研究する余地があるのだろうかと思っていましたが、授業を受けて価値観が広がっていきました。2年次に上がると、実際に自分で資史料を読み発表を行うという授業が大幅に増えて、発表に使う史料集めがとても大変でした。しかし、授業では、さまざまな史料の面白さに触れることもできました。

現在3年次ですが、いままで学習した内容をもとに、より詳細に史料を読み、卒業論文の作成に向けて自分が追求したいものについて、どのように考える必要があるのかの道筋を構築する能力が養えたと感じています。また、これらの歴史学を通して学んだ多角的な見方や、論理的な思考の組み立て方、物事の本質を追及していく姿勢は、今後の人生において自分がどう生きていきたいのかの指針や基準となっていくのではないかと思っています。

ゼミ(研究室)ではどのような活動を行っていますか。

私は古代史ゼミに所属しています。卒業論文の内容は「地獄」を取り上げたいと考えています。今日まで日本人が持つイメージとしての地獄はどんな要素で構成されているのかに興味があります。

ゼミで行っている活動では、自分の興味のある分野の論文を読んで、要約し小グループに分かれて解説し合うというものがあります。毎週違うレポートを作成する必要があるので緊張感をもって課題に取り組みました。また、ゼミの時間の最後には小グループ内でどのような内容の発表があったかを共有する時間があるので、ほかの人の発表も集中して聞くことができ、ゼミ内の交流にもつながったと感じています。

私が古代史ゼミを選択したのは、興味のある時代であったからという理由もありますが、ゼミについての説明会の時に古代史ゼミ担当教員である仁藤智子教授が「王とはなにか」についてのお話をされたこともきっかけの一つです。これは単に、王という言葉の意味ではなく、どんな背景でどんな社会があって王という者が成立したのかという、王の本質は何か、という問いでもあるのだと思います。このお話を聞いてから、私は興味を持った事象や人物の動きなどについて、その背景や本質は何かの探求をやめないこと、表面的なことだけを捉えるのでは不十分だということに気づかされました。このゼミに進んで、さらに物事の本質を追求する姿勢を磨きたいと思い、古代史ゼミを選択しました。

将来のイメージについてお聞かせください。

大学では、様々な授業があり自分の専門外の学問にも触れることができます。その中で、私が持った目標は「世界にある面白いことをもっと知りたい、知ってほしい」です。大学では、その分野の専門家の話を聞く機会を「授業」という形で得ることができます。授業を受けるまではそこまで興味がなかったことも、話を聞くうちに面白いと思える経験に恵まれました。私は大学に来て初めて「学問はこんなに面白いんだ」と感じています。これからも自分が面白いと思えることを増やしていきたいと思いますし、これから学問に触れる人も、いまやっている人も、すでに学校というものを卒業した人にも、「学問は面白い」と思ってほしいと考えています。

将来の具体的な職業については、まだはっきり定まっていない部分も多くありますが、自分の目標に一番近い現場は、やはり大学なのかなと思っています。また、資格取得については、博物館学芸員、図書館司書、学校司書の資格取得を目指しています。これらの専門職に、実際に就くかは分からないし、専門的な知識はほかの仕事では使う場面が限られています。しかし、学んだ方法や、考え方を活かすのは自分次第だと思っています。自分が選んでやったことを必ず自分の力にしてみせるつもりで、経験値を積んでいこうと思います。

国士舘大学をめざす受験生へのアドバイス、メッセージをお願いします。

大学に入る前に思い描いている大学での勉強と、大学に入ってから実際に行われる勉強は全く別物です。特に、私は証拠がないと何も論ずることができない歴史学が専攻ですが、これまでの2年半の授業でその違いを思い知らされました。課題のレポートでは何を論ずるにしても、まず根拠を探すことから始めなければいけません。これは、自分が好きだなと思っていた歴史との大きなギャップでした。歴史学が好きだな、としっかり感じられるようになったのは、実をいうと2年生の後半でした。歴史学の面白いと思えるところを、自分で見つけられたからです。

これから大学生になる皆さんにお伝えしたいことは、目の前の学問の面白さを知ろうとする姿勢が大事である、ということです。自分の選択が想像と違ってやりたかったこととは違っても、基本的には4年間一つの学問に費やすことになります。もし想像どおりではなくても、専攻する学問の、何か面白がれるところはないか探してみてください。何か一つでも、自分の中に引っかかることがあれば、その問いを深堀りして、自分の過ごす大学生活の意義を学問に見出すことができると思っています。大学に進学した意味を、ぜひ自分の力で作ってください。



掲載情報は、2024年のものです。